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■2006年03月21日

▼Silent Moon - Silent Moon-六つの月- 第2話(後編)

お待たせの第2話後編。
今回は、早めに公開できたつもり。 では、どうぞ!

※前編は、こちらです。

*

 ライブ会場で待ち合わせる弥桜と相紅。そこに、錦子と凪姫が現れる。二人がmoemiのファンになったと思い喜ぶ弥桜だったが、相紅は何かを察して錦子に問う。

「もしかして、彼女は…。」
「確証はないわ。でも、彼女のファン同士の会話…『アキバのイベントは盛り上がらない』ってのがひっかかってね。確かめに来たのよ。」
「あ…。月の女神の結界…。」
「そう。だからこれ付けておいて。」

 それは、凪姫の護りの力を、ノンがイヤリング状に変形させたものだった。これにより、月の加護を得ていなくても、僅かなら闇の力を弾くことができるのである。
 そして、錦子にはもう一つ、引っかかる点があった。弥桜から借りたCD。ここに収められた曲からは、確かに禍々しい力が感じられたのだが、それと相反する様な心地よさも感じられたのだ。その不自然さを突き止めるため、錦子はノンにCDの解析を依頼していた。

「それが何かわかれば、確証が持てるんだけどね…。」

*

 ライブの幕が上がる。錦子と凪姫は、店長が用意したチケットで入場する。
 ライブは1曲目から過剰な盛り上がりを見せ、観客はmoemiの歌に陶酔してゆく。アキバでのイベントでは見られなかった状況…。それは、歌っているmoemiも同様だった。
 次第に一体感が高まるライブ会場。その時錦子は、観客からmoemiに流れるエネルギーの波に気づく。まるで、moemiが観客のエナジーを吸収している様な流れ…。そして、moemiの歌にはそれを引き出すかの如く、禍々しい「何か」が込められていた。

「闇の力…!」

 錦子がそう気づいたのと時をほぼ同じくして、moemiも月の力を観客席から感じ取っていた。それは、錦子が予め渡していたイヤリングからのものだった。

「私の歌を邪魔する者が潜り込んでいるわ。そいつらを捕らえてちょうだい!。」

 その声に従う様に、一斉に錦子達に襲いかかる観客。更に闇の波動を強め、歌うmoemi。

「人を傀儡の様に操る力…これは『風の闇結晶』!」

 歌に操られているだけの観客に対し、月の力で攻撃するわけにはいかない。とりあえず、その身に月の力を纏って抵抗する錦子と凪姫であったが、多勢に無勢。しかも、相紅と弥桜を守りながらでは充分に動く事もできず、ついに4人は観客に押さえつけられてしまう。

「インフィニティ・ドレスっ!!!」

 絶体絶命と思われたその瞬間、ノンの声が響く。駆けつけたノンの技により、一瞬、moemiの歌による観客への呪縛が解かれる。『無限の装飾-Infinity Dress-』は力そのものの性質を変える力…。観客を操るmoemiの歌を無効化したのだ。その僅かな隙をついて、脱出する錦子達。
 しかし、更に歌い続けるmoemi。歌に込められた闇の力を『無限の装飾-Infinity Dress-』で無効化できるのは、一瞬の間のみ。状況が好転したわけではない。moemiの歌を抑えるため、ノンは相紅に向かって叫ぶ。

「相紅ちゃん、歌って!あなたの声で観客の呪縛を解くわ!」

 ノンは、相紅の歌の力に賭けた。あの力強い歌声を『無限の装飾-Infinity Dress-』で変換すれば、きっと闇の力を打ち破れるはずだと!
 そして、相紅の歌声が会場に響き渡る。ぶつかり合う二人の歌声。moemiへの想いを込めて歌う相紅の歌声が、次第に闇の力に支配されたmoemiの歌声を圧し、ついには観客の呪縛を解く。その場に倒れ込む観客達。
 その歌声は、moemiの心にも届いていた。立ちつくし、一筋の涙を零すmoemi。だが、それもつかの間、何かに導かれる様にライブ会場から走り去る。

「お願い、錦子…。彼女の呪縛を解いて…彼女を助けてあげて…!」

 全てを察し、錦子に告げる相紅。錦子が感じていた不自然さ。同じ道を歩んでいた相紅は、その理由を、彼女が流した涙の意味を理解したのだった。相紅に目で合図し、moemiを追う錦子。凪姫、ノンも、それに続く。

「錦子さん。あのCD、確かに闇の力が込められていました。聴いた者を『moemi』という存在へ縛る力です。
 でもそれは、歌声自体が発する力ではなく、後から込められた力…。歌そのものは、むしろ…。」

 やはり…。ノンから分析結果を聞いて確信する錦子。そして、moemiは自分に任せ、二人には援護に回るように指示する。
 三人が建物の外へ飛び出した瞬間、すさまじい衝撃波が襲う。moemiの声による攻撃に対し、反射的に『紋章の防壁-Emblem Shade-』で防ごうとする凪姫だったが、力負けしてしまう。はじき飛ばされる凪姫。
 錦子は『真紅の旋風-Crimson Gale-』を使い、moemiへの接近を試みる。この技は、身に纏った月齢の力よる戦闘服をさらに組み換え、自らの肉体を戦闘状況に応じた形に強化する技。しかし、身体への負担が大きいため、長時間使用することはできないという諸刃の剣でもある。

「衝撃波の死角に潜り込めれば…!」

 凪姫とノンは力を合わせ、衝撃波に対抗できる『紋章の防壁-Emblem Shade-』を展開して援護するが、錦子は容易に近づく事ができないでいた。その時、相紅が三人を追って建物の外に出てくる。声を武器にして戦うmoemiを目の当たりにし、相紅は叫ぶ。

「moemiっ!あなたは、あの頃の心を忘れてしまったの?!その心が…あなたの歌声の強さがあれば、闇の力にだって打ち勝てるでしょう!!」

 その声に、moemiの攻撃が一瞬途切れる。その瞬間を、錦子は見逃さなかった。大地を蹴り、懐に潜り込んだ錦子の目に、真の敵の姿がはっきりと映る。そう。涙を流しながら戦っていたmoemiの向こう側に潜む、闇の姿が…!

「ゼウス・サンダーボルトォーーーーーーーーーっ!」

 錦子が放った『天空の雷槌-Zeus Thunderbolt-』はmoemiの脇をすり抜け、倒すべき敵へ打ち込まれる。絶叫と共に、潜んでいた真の敵が姿を現す。それは、moemiのマネージャーだった。闇の力を使って観客を操っていたかに見えたmoemi自身も、彼女のマネージャーに操られる傀儡だったのだ。膝から崩れ落ちるmoemiに駆け寄る相紅。
 全てを見破られ、暴走を始めるマネージャー。その姿は既に、『人ではないもの』と化していた。無差別に周囲を攻撃し始め、それはmoemiにも向けられる。

「貴様ハ用済ミダ。マタ新シイ触媒ヲ見ツケ、私ハ更ニ力ヲ手ニ入レル!」

 迫るマネージャーの攻撃に、動けないmoemiを守ろうと覆い被さる相紅。命中するかに思えた刹那、凪姫の『紋章の防壁-Emblem Shade-』がそれを弾く。

「歌を、人の心を喰らう触媒に使うなんて許さない!」

 天空に向かって伸ばした錦子の右腕に、雷のエネルギーが集まり、放電を始める。それに対抗するため、更により強大な闇の力を使おうとするマネージャー。
 しかし、それが命取りとなった。膨れあがった闇の力は、自らの身体で制御できる限界を超え、断末魔の叫びと共にその肉体は崩れ去る。闇に心を呑まれた愚かな人間の末路だった…。そして『風の闇結晶』は、次の愚かな心を求めて消え去った。

「ヤツは、moemiという触媒を通して人の欲望のエネルギーを喰らっていたのよ。」
「moemi自身の歌う事への執着が、闇に利用されたのね…。」
「そうよ。でも、ヤツは一つ、大きな間違いを犯した。それは、その触媒に彼女の歌を選んでしまった事よ。彼女の歌の持つ力は、闇のそれと全く反対の性質を持っていた…。それが、私や相紅に不自然さを感じさせる事になったのよ。」

*

 数日後。入院していたmoemiの退院を出迎える錦子と相紅。

「相紅…なんて言ったらいいか…。助けてくれて、ありがと…。」
「ううん。私は何もできなかったもの。命がけで戦ったのは、錦子達だし…。」
「いいえ…。あの時のあなたの歌声、そしてあなたの叫びが、私の呪縛を解いてくれたのよ。それに、体を張って私を守ってくれたじゃない。」
「身体が勝手に動いてたのよ。」
「あなたは、いつもあんな危険なコトをしてるの?」
「今回はトクベツ。いつもはメイド喫茶で、ご主人様やお嬢様にお給仕してるだけよ。」

 少し、悪戯っぽく笑う相紅。

「moemi。これからどうするの?」
「もう一度、自分の歌を見つめ直してみようと思うの。今の私の歌、音楽から離れてたはずの相紅の歌に、完全に負けてるわ。いつの間にか、歌う目的を見失ってたんだもの…当然よね。だから初心に返って、一からやり直すつもり。」
「そっか…。moemiなら、できるよ。」
「うん…。
 それよりも、相紅はもう歌わないの?あなたの歌なら、プロとしても充分…。」
「ふふ…。歌は…何処にいたって歌えるわ。歌う『場所』は問題じゃないよ。」
「…変わらないなぁ…そういうトコ。絶対敵わないわ。」

 二人に一礼して歩き出すmoemi。その歩みに迷いは見えなかった。

「大丈夫そうね、彼女…。」
「えぇ…。あの『声』があればね…。」
「『声』…?」
「あれ、気づかなかった?
 私ね、一緒に学んでいた頃…あの『声』を聴いて自分の限界を感じたのよ。絶対敵わないって思った…。」
「あ…それがCDから感じられた不自然さ…。」

 moemiの歌声を思い出す様に、瞼を閉じて、相紅は静かに呟く。

「そう…彼女の声は『1/fゆらぎ』を持ってるから…。」

*

 数ヶ月後、小さな会社からリリースされたCDが、静かな話題を呼び始める。

 『その声は届かない… / song by moemi』

SilentMoon~六つの月~ 第二夜「その声は届かない」・-完-


 はい。文字でアクションシーンを表現する事の難しさを痛感した戸神です(汗)。
 第2話、誰が何と言おうと錦子がメインです。シナリオ形式なのでセリフが少ない様に見えますが、活躍して…して…してるはず…(苦笑)。
 当初のプロットでは、錦子がマネージャーにとどめを刺すという流れだったんですが、文章に肉付けする段階で、公開した内容に変更しました。勧善懲悪な話ではないので、極力、人の命を殺めない展開を目指したいなぁ…と。

 さて、今回から本作特有の設定が登場してるので、ちょっと補足を…。
 前編冒頭(アバンタイトル)の文章ですが、その内、物語内で徐々に謎解き明かされていくので、読み流してくださいませ(笑)。ちなみに、伏線はたくさん張ってあります。
 錦子が使う『真紅の旋風-Crimson Gale-』。シナリオ中にもある通り、月の力で形成された戦闘服を、戦況に応じて更に再構成し、自らの肉体を強化する技です。当然ですが、戦闘服のデザインも変わります。その辺りのデザインは、将来、設定集2として公開予定です。
 そしてもう一つの技『天空の雷槌-Zeus Thunderbolt-』。その名の通り、雷系の技です。集積するエネルギーが多ければ多いほど強力な技となりますが、その分、技を発動するのに時間がかかるという代物です。錦子は2種類の技を備えている反面、諸刃の剣でもあるという設定です。
 ノンが使う『無限の装飾-Infinity Dress-』。力の性質を変える力で、その対象は月の力に限らず、全ての存在する力となります。つまり、この技だけでは何も起こす事はできません。何かの力にこの技を加える事により、別の新しい力を生み出す事ができます。2話では、最初にmoemiの歌声による呪縛の力を無効化し、続いて相紅の歌声を呪縛を解く力へ変換してます。さらに、衝撃波に対して効果のなかった凪姫の『紋章の防壁-Emblem Shade-』を、対衝撃波仕様に強化しました。
 凪姫が使う『紋章の防壁-Emblem Shade-』。6人中、唯一の防御の技です。凪姫の精神力に呼応して、その防御力が変化します。まだまだ不慣れな凪姫の力では、充分に使いこなせていないのが現状です。そして、その技の名が示す通り、この技にはまだ明かされていない秘密があります。その辺りは、今後の展開で徐々に…。

 次回第3話以降は、私事が忙しくならない限り、結構スピーディーに公開できるのではないかと思ってます。ま、あまり期待せず、気長にお待ちくだされば幸いです(笑)。というわけで、今回から次回予告なんぞを付けてみる事にしました。(期待感を煽るため?(笑))オマケで2話のものも、公開しておきます。

■第3話予告■
 βテストが始まったばかりの人気オンラインゲームの世界が、現実の世界に出現した。そして、そのプレイヤー達は昏睡状態に陥り、ゲーム世界からログアウトできなくなる。闇の力を感じ取った6人は、結晶の力を使う者を探すため、ゲーム世界への介入を試みる。
 次回、SilentMoon~六つの月~ 第三夜「終わりなき迷宮」。彷徨う心の出口は、ロジックでは開かない---。

■第2話予告■(おまけ)
 懐かしい歌声…。しかしそれは、記憶の中のそれとは違う、不自然な音だった。歌い続ける事に拘った結果、とらわれてしまった心…。その呪縛から解放するため、相紅の歌声が駆け抜ける。
 次回、SilentMoon~六つの月~ 第二夜「その声は届かない」。からっぽの歌声は、誰の心にも届かない---。

※この物語はフィクションです。実際の社会・団体・人物等とは一切関係ありません。
Copyright (c) 2006 Yull Togami. Magical-Kids. All rights reserved.

投稿者 戸神由留 : 2006年03月21日 13:48

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