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■2008年04月26日

▼Diary - またひとつ…

あー、歳はとりたくないね。苦笑

気だけは若いつもりなんだが…。
(それ自体が年寄り臭い発言…汗)

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■2008年04月07日

▼Silent Moon - Silent Moon-六つの月- 1~6話 事件年表

第6話、いかがだったでしょうか?

とりあえず、メイン6人それぞれにスポットを当てた話を一通り公開したわけですが、
現在と過去を行ったり来たりの展開が多かったので、全体の流れがわかりにくかったかな…と。
そんなわけで、6話までに描かれた出来事を時系列に並べた年表を作ってみました。
現時点での設定なので、もしかしたら後で変更があるかもしれませんが…苦笑。
(実際、5話時点で作っていた年表から変更になった部分もあるし…。)

携帯からの閲覧を考慮してタグをほとんど使用していないので、
若干見にくいかもしれませんが、その辺りはご容赦くださいませ。

*

xx/xx 5:雫が彼氏と共に文のバイト先"cafe Marionette"を訪れる。
03/xx  文が高校を卒業。
04/xx 5:THE EARTHがシングル「Marionette」をリリース。
06/xx 3:依子(五月の妹)が"眠りのレリーフ"を入手。
07/xx 3:依子が学校の屋上から身を投げる。依子死亡。
07/下 3:五月が依子の遺品から"眠りのレリーフ"を発見。
08/下 4:優妃の自宅が火事に見舞われる。両親・姉が死亡。
09/xx 3:五月が"月と闇の物語"を知る。
12/24 5:五月・茉莉・錦子が"水の闇結晶"と初交戦。
12/24 5:雫の彼氏が交戦時の事故に巻き込まれ死亡。
01/xx  SilentMoon開店準備開始。
03/xx  相紅が音楽専門学校を卒業。
04/上 4:優妃が一人暮らしを始める。
05/下 5:雫採用。
06/中 5:文・他3名採用。
06/下 5:凛華・粉雪採用。
06/下 5:五月・凛華・粉雪・文・雫が"水の闇結晶"と交戦。
06/下 5:文が"水の闇結晶"(雫)と交戦。雫死亡。
07/02  SilentMoon店舗オープン。
07/02  文Birthday
08/上  相紅採用。(雫死亡による欠員補充のため。)
09/上 4:優妃の部屋に空き巣が入る。
09/上 4:優妃が客として初来店。
09/14  凪姫Birthday
11/上 3:凛華・粉雪・五月が"炎の闇結晶"と交戦。
11/上 3:6人が"炎の闇結晶"(準覚醒体)と交戦。
11/28  粉雪Birthday
02/上 4:五月が"炎の闇結晶"(準覚醒体)と交戦。負傷して暫く休暇。
02/05  錦子・凛華Birthday
02/14  依子(五月の妹)Birthday
02/14 4:五月が職場復帰。
02/14 4:凪姫・弥桜が客として初来店。
02/14 4:五月・凛華・粉雪が"炎の闇結晶"(優妃)と交戦。
02/14 4:五月が"炎の闇結晶"に身体を奪われる。
02/14 4:凛華・粉雪が"炎の闇結晶"(五月)を封印。五月死亡。
03/02  弥桜Birthday
03/中  優妃が高校を卒業。
03/下  メイド3名が卒業。
03/下  凪姫・ノン・弥桜採用。
03/下  凪姫が"HarvestMoon"、ノンが"GibbousMoon"の"使い手"となる。
04/上  優妃採用。
04/24  ノンBirthday
05/下 1:6人が"水の闇結晶"(ゆめか)と交戦。
06/上 2:錦子・凪姫・ノンが"風の闇結晶"(moemiのマネージャ)と交戦。
06/上 6:凛華・粉雪が"水の闇結晶"(優衣の母親)と交戦。
06/中 3:凛華・粉雪・文・凪姫が"風の闇結晶"と交戦。
06/中 3:茉莉が凪姫へ五月の話を語る。
06/下 5:凪姫・文が"水の闇結晶"(女性教師)と交戦。
06/26  相紅Birthday
06/末 6:沙緒採用。
06/末 6:6人+沙緒が"水の闇結晶"の残留思念(優衣のアリス人形)と交戦。
06/末 6:朱月採用。
07/02  SilentMoonオープン一周年で記念イベント開催(1~7日)。
09/上 2:moemiのシングル「その声は届かない…」リリース。

*

以上、よく見るといろんなものが見えてくる年表でした。笑
過去がやたらと多いですが、土台をきっちり作っておかないと
後で辻褄が合わなくなってきたりするので、細かく設定してあります。

あと、念のため注釈を付け加えておくと、ここに挙げた事件は各話で描かれたものだけなので、
実際にはこれ以上の事件が起こっていると思ってくださいませ。
あえて書いていない出来事もあるし…。意味深

近々、画稿の方もアップできればと思ってます。
では、7話書いてきますっ!

※この物語はフィクションです。実際の社会・団体・人物等とは一切関係ありません。
Copyright (c) 2006-2008 Yull Togami. Magical-Kids. All rights reserved.

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■2008年04月04日

▼Silent Moon - Silent Moon-六つの月- 第6話

お待たせしました!第6話、いよいよ公開です。
しかも、今回は前後編に分けずに一気に公開!

それではどうぞ~。

*

1.プロローグ

 人は誰しも、自分が一番幸せでいられる場所を求めている。そして、そんな自分と同じ時間(とき)を過ごしてくれる人も…。だが、必ずしもそこに辿り着ける人ばかりではない。いや、むしろ辿り着けるのはほんの一握りの人たちだけなのだ。だからそんな場所を、人は"楽園"と呼ぶのかもしれない---。

「よせっ!それ以上、力を使うんじゃないっ!!」

 凛華(りんか)が、"闇に憑かれし者"に向かって叫ぶ。
 moemiのライブが行われていた頃、凛華と粉雪(こゆき)は別の場所で"水の闇結晶"に憑かれた女性と対峙していた。

「粉雪!錦子(ぎんこ)たちはどうしたんだ!?」
「どうも、向こうも"闇結晶"だったらしいの!」
「よりによって同時出現かよ…!」

 狭い住宅街での交戦---。迂闊に技を放てば、周囲に被害が及んでしまう。ただでさえ日が落ちて薄暗い上に、動きを制限された路地で二人は苦戦していた。"闇に憑かれし者"が周囲の水を生き物のように操り、それらが波状攻撃のごとく襲い掛かる。限られた空間を駆使して粉雪が俊敏な動きを見せるが、一方の凛華は技を放つタイミングを掴めないでいた。

「私タチヲ不幸ニシタ世界スベテニ、復讐シテヤルノヨ!」

 それは、その女性の心の叫びでもあった。やっと掴んだ幸せを一瞬のうちに失ってしまった彼女の絶望は、"闇"の蝕む速度に拍車を掛け、瞬く間にその心の奥深くまで達していた。凛華と粉雪がその端緒に気づき調査に乗り出したが、時すでに遅く、彼女は幾人かの命を手にかけた後だった。そして、そのことが彼女を更に追い詰めてゆく。

「このままじゃ、彼女の心が壊れるのも時間の問題だ。粉雪、一気に畳み込むぞ!」
「わかったわ!」

 しかしそれが逆に仇となり、彼女はさらに強大な力で二人を排除しようとする。だがその瞬間に、力の放出が彼女の肉体の限界を超える。力を支えきれなくなった身体はまるで飴の様に捻じ曲がり、膨れ上がった四肢は既にその形を成していなかった。

「ばっかやろうっ!!」

 それでもなお二人に襲い掛かろうとする彼女を、凛華が"天使の光輪-Angel Halo-"で捉える。それに合わせて、"螺旋の遠矢-Spiral Arrow-"を放とうとする粉雪。しかし、強引に"天使の光輪-Angel Halo-"を引き裂こうと力を放出した彼女の身体はその臨界を突破し、断末魔の叫びと共に無残に崩れ去る。
 何かにすがる様に天に向かって手を伸ばした彼女から、"水の闇結晶"が離れてゆく。二人の健闘空しく、小さな幸せすら掴むことが許されなかった哀れなひとつの命の火が消えた。

「俺たちじゃ…、俺たちじゃ救えないのかよっ!」

 凛華のその嘆きは、星が瞬き始めた夜空に空しく吸い込まれていくのだった。

第六夜 楽園の果て

2.新しい仲間

 一ヵ月後、一周年を間近に控えたSilentMoonでは新人メイドを迎えていた。一年を経てそれなりに知名度も上がり、連日満席が続く盛況ぶり。嬉しい悲鳴を上げる一方で、"闇"の活動も活発化し、その対応にも追われていた。店舗の営業はギリギリの状態が続き、その反省から新人メイドの採用を決めたのだった。生前、"多くの人を巻き込みたくはない"と言い続けた五月(メイ)…。その遺志との葛藤の中での茉莉(まり)、錦子の英断だった。

「沙緒(すなお)です。よろしくお願いします!」
「一周年イベントも目の前だし、全力でかかるぞ!ビシバシいくから覚悟しとけ!」
「凛華…、せっかく見つけた新人をビビらせてどうするのよ!」

 錦子が呆れ顔で、凛華につっこみを入れる。

「ふふ。凛華さんは、ああ見えて根は優しいのよ。心配しなくても大丈夫♪」

 今日、新人メイドの指導を担当することになっているノンが、少し萎縮している沙緒に優しく声を掛ける。

「じゃ、早速開店準備始めようか?まず、モップはここに立てかけてあるから…。」

 そう言いながら、ノンは壁に立てかけたモップに手を伸ばす。しかし、柄に手を掛けようとした瞬間、一歩前に出した足がモップの先端を踏みつけ、ノンの思惑に反したそれは手をすり抜けて彼女の顔面を直撃する。不意の出来事とあまりの痛みのため、その場にしゃがみこむノン。バツが悪そうに苦笑いをしながら、"よそ見をしていると危険っていう見本だから…"と取り繕う。それをきっかけに、緊張しっぱなしだった沙緒の顔に笑みがこぼれた。

「計算なのか天然なのか…。彼女には、場を和ませる独特の雰囲気があるのよ…ね。」

 その一部始終を見ていた錦子は、失笑しながらも微笑ましく思うのだった。

3.謎の失踪事件

「ノン、ちょっといい?」

 店内に入ってくる早々、怪訝そうな表情の茉莉がノンをバックルームへ呼び出す。今日はシフトに入っていないはずの茉莉が、わざわざ店に出向いてくるとは余程のことなのか。錦子は、バックルームに向かうノンを不安そうに見送る。

「これ見てほしいの。」

 そう言って、茉莉はおもむろに地図を広げる。その地図には、一区画に集中して赤いマークがいくつもつけられていた。

「報道機関に発表されていないものを含めて、ここ一ヶ月の間に起こった失踪事件の発生場所よ。」
「単なる失踪事件で片付けるには多すぎるますよね。これって"闇"の…?」

 ノンのその問いかけに、茉莉は歯切れの悪い言葉で返す。

「そうはっきり言い切れればいいんだけどね。どうも解せない点があるのよ…。」

 茉莉によると、失踪が発生したと思われる時刻に、月が六つに分かれる現象を見た"使い手"がいないのだという。もちろん、ノンも例外ではなかった。"闇"が出現すれば、それを察知した"月の欠片"が月の分離現象を"使い手"に見せるはず…。赤いマークの脇に書かれた時刻を改めて凝視しながら、ノンが口を開く。

「そう言われれば…。これだけの事件が起こっていて、私たちが誰一人として月の分離現象を見ていないというのも変ですよね。ところで、失踪した人たちに共通点は?」
「今のところ、何も見つかっていないわ。ただ…。」
「…ただ?」
「えぇ。良く見てもらったら分かる通り、失踪したと思われる時間帯に幅があるケースが多いでしょ?それは、ピンポイントの時間帯が特定できないからなのよ。」
「それってどういう事なんですか?」
「気づいたらいなくなっていた…。つまり、周囲の者が当人がいなくなっていることに中々気づかなかったケースがほとんどなの。」
「気づかないなんて、そんなこと---。」

 そう言いかけて、あることが頭をよぎったノンが言葉を止める。そういうケースに、当てはまる事例があった。

「もしかして、引き篭もり…?」
「すべてがそうというわけじゃないけどね。そういう傾向だった人や欝だった人、鍵っ子なんかも含めれば、約8割が当てはまることになるわ。」

 確かに、人と交流することに対して消極的な人なら、いなくなったことに気づかれないかもしれない。たとえ目の前でその人がいなくなったとしても、周囲の人間が気づかないことさえあり得るのだ。ノンには、そういったことに心当たりがあった。

「"闇"が関わっているかまだ断定できないんだけど、こう多発していては見過ごすことは出来ないわ。今から調べてくれない?新人指導は錦子に頼んでおくから。」

 シフトを茉莉と交代し、ノンは早速調査に向かう。

4.視線

 ノンは一人、狭い住宅街の一角に立っていた。見通しの悪い街並みは、何処となく"闇"の存在を暗示しているようにも見える。昨晩降った雨のせいか、所々にその痕跡が残り、それが一層沈んだ雰囲気を作り出していた。

「いかにも…な、感じよね。」

 しばらく街中を歩いていたノンだったが、失踪事件の影響もあるのか人通りは少ない。いや、この街の普段の風景がこうなんだろうか。それを除けば、特に変わったところは見受けられなかった。
 だが、失踪事件のあった地点を一巡した頃、ノンは自分へ投げかけられた確かな視線を感じ取る。

「………?付けられてる……!」

 その正体を確かめるため、気づかないふりをしながら、カーブミラーのある場所へと移動する。そして、ミラーに映る謎の人影を視認した。

「女性…、女の子かしら…?」

 ノンは、ミラーに映るその人影をさらに確認するために、ミラーに神経を集中しながら移動する。しかし、その足が水溜りを踏んだ次の瞬間、まるで底なし沼であるかのように、水溜りに引き込まれてしまう。

「しまった…!ギバス・ムーンっ!!」

 ノンは、咄嗟に月の欠片"GibbousMoon"の力を纏う。だが、不意打ちであったこと、まさかこんな昼間に…という油断が、ノンの判断を一歩遅らせてしまった。抗う間もなく、一瞬のうちに半身が水溜りの中へ沈む。その時ノンは、僅かな"闇"の気配を感じる。

「やはり"闇"…?!凪姫(なぎ)…!!」

 全身が水溜りに飲み込まれる刹那、ノンは凪姫にテレパシーを飛ばし、身に付けていたアクセサリに"無限の装飾-Infinity Dress-"を掛けて放り投げる。そのアクセサリは辛うじて水溜りの外に落下したが、ノンは水溜りに飲み込まれてしまった。そして、周囲は何事もなかったかのように、再び静寂を取り戻す。
 その一部始終を見ていたのか、先ほどの人物がその付近に近づき、周囲をうかがう。そして、ノンが残したアクセサリを手に取り、しばらく見つめていたかと思うと、おもむろにその場を立ち去って行った。

5.捜索

「ノンちゃん…!?」

 遅番シフトのために店に向かっていた凪姫に、ノンのテレパシーが届く。すぐさまそれが途切れた周辺へ向かった凪姫は、ノンがテレパシーと同時に飛ばしたビジョンに一致する場所を探す。
 一方、凛華もノンのテレパシーを感じ取り、急遽仕事を抜け出して粉雪と合流、その場所へ向かっていた。

「そういえば、凛華。シフトに入ってたんじゃないの?」
「安心しろ。ちゃんと手は打っておいた。」

 その言い方に、またか…と少し呆れ顔の粉雪だったが、どうせ言ったって無駄なのだ。今日の犠牲者に同情しつつ、先を急ぐ。そして、連絡を取り合いながらそれぞれ周辺を探索するが、ノンがいた痕跡どころか"闇"の気配すら感じることが出来ない。三人は一旦合流し、対策を練る。

「ノンちゃんはテレパシーで、確かに"闇が…"って言ってたんです!」
「しかし、その気配は全く感じられねーな。」
「もし不意打ちに合ったのだとしても、あのノンちゃんが何の痕跡も残さないなんて考えられないわね。」
「痕跡…か…。」

 その時、凛華が三人の様子をうかがう視線に気づく。かなり離れた場所から向けられているためか、粉雪と凪姫は気づいていない様子だ。

「なんだ…?わずかだが、"GibbousMoon"の気配を感じる…!」

 凛華がその視線に意識を集中しようとしたとき、ノンの身を案じ逸る凪姫が再び探索に出ようと駆け出す。その足が水溜りに触れた瞬間、水が絡みつき、凪姫は引き込まれそうになった。

「スパイラル・ブリザード!」

 粉雪が一瞬の判断で"螺旋の吹雪-Spiral Blizzard-"を放ち、凪姫の足元の水溜りを凍らせる。間一髪、凪姫は水溜りに引き込まれるのを免れた。

「凪姫ちゃん、危なかったわね。」
「すいません、粉雪さん。」
「凪姫!ちょっとは警戒しろ!」
「はいぃ…、すいませんっ!!」
「でも、今の…」
「あぁ、確かに感じたな。一瞬だったが…。」

 ほんの一瞬だったが、確かに"闇"の気配を感じた三人。ふとさっきの視線の方向を見る凛華だったが、すでにそこには何も感じられなかった。凛華は粉雪と凪姫に水溜りを調べるように指示し、その視線の主の行方を追う。

「さっきの視線の主が仕掛けやがったのか…?いや、それにしてはやけにあっさり引き下がったな。それにあの"GibbousMoon"の気配も解せない…か。」

 一方、凪姫と粉雪は水溜りを調べていた。

「何の変哲もない水溜りよね。」
「でも、確かにさっき…!」
「水溜り…、"水の闇結晶"なのかしら…?」

 そう呟きながら、粉雪はふと改めて周囲を見渡す。どこか見覚えのあるような薄暗い町並み---。

「そういえばこの辺りって…。」

 粉雪は、以前この付近で"闇"と対峙したことを思い出す。それは、moemiのコンサートがあった同じ日に、"水の闇結晶"に憑かれた女性を救えなかった場所だった。

「偶然…?だとしたら、嫌な偶然よね…。」

6.アリスの嘲笑

 静かに風が流れる草原、小高い丘に立つ巨木の陰に、ノンは倒れていた。
 頬を撫でる風に目を覚ましたノンは、周囲をうかがう。少し離れた場所に見える人影。警戒しながら近づくと、そこには幼い少年少女たちが集まって遊んでいた。その中の一人、青い服を着た少女がノンに近づき、声を掛ける。

「不思議の国の楽園へようこそ。私はアリス。あなたの名前は?」

 無邪気な表情でアリスと名乗るその少女から、他の少年少女たちとは異なる何かをノンは感じとっていた。

「ここはどこなの?」
「ふふ。不思議の国の楽園…貴方の望みがかなう世界よ。」

 悪戯っぽく笑うアリスに対し、ノンは相手のペースには乗らないという意思表示をするかのように、冷静に質問を続ける。

「望みがかなう…?とりあえず、私の望みは元の世界に戻ることなんだけど?」
「あら、どうして?ここは楽園なのよ?ここにいれば、ずーっと楽しいことが続くんだから。」
「楽しい?こんな、見渡す限り何もないところが?」
「そうよ。ここにいれば、あなたの望みは何だって叶うわ。ほら、みんなも楽しそうに遊んでるじゃない。」
「そうね。でも、私はあの子たちよりずっとお姉さんなんだけどな。」
「大丈夫。あなたも向こうの世界に居場所がないんでしょ?だったら、ここにいて優衣(ゆい)ちゃんの友達になってあげて。すぐに仲良くなれるわ。」

 本音はそこか…。アリスの言葉に核心を見出したノンは、わざと挑発するような調子で言葉を返す。

「居場所がないだなんて…。私にはたくさんの仲間が待ってるのよ。こんな所より、ずっと楽しい場所でね。」

 それを聞いたとたん、アリスの表情が険しく曇る。

「嘘!あなたの心の向こうに、一人ぼっちのあなたが見えるわ。一人ぼっちで泣いてるあなたが…。」

 その言葉が、まるで呪文のように胸に突き刺さり、ノンは以前の自分を思い出す。そしてそれを見透かしたかのように、アリスが不気味に微笑む。その瞬間、ノンの身体に変化が現れ始める。少しずつ自分の視線が低くなっていることに気づいた彼女は、咄嗟に"無限の装飾-Infinity Dress-"を放つ。光の粒子がノンの身体を包み込んで広がり、彼女の身体にまとわり始めた黒い粒子を弾き飛ばす。同時に身を翻し、ノンはアリスと距離を取った。

「今のは何…!?」

 開いた両手を確認したノンは、それが若干小さくなっているような違和感に気づく。いや、まるで年齢が逆行したかのように若返っているのだ。確かに、自分の視線の高さもアリスに近づいている…。

「さっきまとわりついた黒い粒子に、年齢逆行の作用が…?と言うことは、あの子供たちは行方不明の…!」

 子供達の方向を見るノンだったが、当の子供たちは、こちらで起こっていることなど気にも留めず、無邪気に遊び続けている。

「楽しそうでしょ?ほら、あなたも心を開いて。一人はイヤ、寂しいのはイヤ…。だったら、永遠にここに居ればいいのよ。それがあなたの望み…。」

 アリスは不敵な笑みを浮かべ、この手を取れと言わんばかりに差し出す。ここは、一旦引いたほうが得策…。そう判断したノンは、アリスから遠ざかる方向へ走り出す。

「でも…ここは多分、あのアリスが作り出した空間。一体どこへ逃げれば…。」

 その様子を見て、アリスが無邪気に、そして悪戯っぽく呟く。

「あら、鬼ごっこ?逃げても辛い思いをするだけなのに…。」

7.沙緒の力

 その頃、まったりとした空気のSilentMoonの店内では、錦子が沙緒を指導していた。すると突然、息を切らせた弥桜(みお)が飛び込んでくる。

「どうしたのよ、そんなに急いで。あなた、今日はシフトに入ってないじゃない。」
「だって…これっ!」

 息が荒いまま、弥桜は携帯電話に届いたメールを錦子に見せる。そこには、たった三文字「代われ」とだけ打たれたメールが表示されていた。差出人は---

「凛華…!さっきから見かけないと思ったら、また…!」

 強制的に交代指示のメールを打って、いつの間にか消える。それが凛華の得意技だった。そして、主にその犠牲になっているのが弥桜なのだ。

「ホントごめんね、弥桜。凛華には後で厳しく言っとくから、とりあえず着替えてきて。」
「いえ、いいです。もう慣れました。いつもの事だし…。」

 そう言いながら、弥桜は疲れた表情でバックルームに向かう。そんなやりとりを見ていた沙緒が、錦子に質問する。

「凛華さん、どうかしたんですか?」
「どうしたもこうしたも…いつもの事なんだけどね。凛華はよく、何にも言わずに突然消えるのよ。もちろんサボってる訳じゃないんだけど。せめて一言断って行けって言ってるのに…。」
「そういえば、ノンさんもいらっしゃらないみたいなんですけど…。」
「あぁ。ノンは茉莉さんにお使い頼まれて出かけてるのよ。」
「そうなんですか…。」

 少し残念そうな表情をする沙緒に対し、錦子が少し皮肉っぽく笑いながら問う。

「あら、私じゃ不満?」
「いえっ!そういう意味じゃなくて、すごく親しみやすそうな人だったんで…。あ、錦子さんが親しみやすそうじゃないと言うわけではなくって…。えーと、えーと…、あのツインテールが可愛いなって…。いや、私、何言ってんだろ…。」

 沙緒はバツが悪そうに、食器を片付け始める。動揺してあせるそんな沙緒の姿を、錦子は微笑ましく見つめながら思う。

「名前どおり、素直ないい娘ね。でも、この娘が私と同じ"CrescentMoon"に適応するって、ちょっとピンと来ないけど…。かつての五月さんも凪姫とは全く正反対なキャラクターだったしね。"月の欠片"とそれに適応する者って、どういう基準で選ばれるのかしら…?」

 そんなことを考えながらふと目を放した途端、キッチンの前でガラスの割れる音が鳴り響く。どうやら、動揺が治まっていなかった沙緒が食器をひっくり返したらしい。

「失礼しました!」

 客席に向かってそう挨拶し、錦子は沙緒の元に駆け寄る。

「大丈夫?怪我はない?」
「はい…、すいません…!ちょっと焦ってて…。」
「ま、失敗は誰でもするわよ。大事なのは、その後の処理。ほら、モップ取ってきて。」

 散乱した食器の破片を拾い集めながら、錦子は沙緒に指示を出す。それに従い立ち上がった沙緒だったが、動揺しきっているためか足がもつれてふらついてしまう。それを予測していたかのように、錦子がすかさず沙緒を支える。

「焦りは禁物…。一度深呼吸して落ち着くといいわよ。」

 緊張をほぐそうと錦子が笑顔でアドバイスをすると、少し落ち着いたのか、沙緒は深く息を吸い込む。その瞬間、沙緒の脳裏にビジョンが飛び込んでくる。深く木々が生い茂った薄暗い場所。それらが風に揺られる音に混じって、荒い息遣いが聞こえる。リズム感を失った足音と共に、その人物の顔が沙緒の脳裏に飛び込む。だがそのイメージは、風船がはじけるように一瞬で消え去る。

「ノンさん…!?」
「ん、どうしたの?何かあった?」
「いま一瞬だけど、ノンさんの姿が見えたんです。樹がたくさん生い茂ってる森みたいな場所で、何かに追われるような感じで走っていた気がします…!」
「ノンが…?」

 錦子がふと自分の胸元に目をやると、月の欠片"CrescentMoon"が僅かに輝いていた。自分は力を使っていない。もしかしたら、沙緒と近づいたことで"CrescentMoon"が彼女に反応したのだろうか。もし、沙緒が見たビジョンが"月の欠片"の力によるものであれば、ノンの身に何かが起こっているのかも。そうか、だから凛華も…!
 不安を感じた錦子は、粉雪にテレパシーで呼びかける。そして、ノンが行方を絶っていることを知らされたのだった。

「沙緒も私と同じ"CrescentMoon"に適応する者…。でも、私に見えなかったものが沙緒には見えた。もしかして、同じ"月の欠片"に適応しても、その力の現れ方には少しずつ違いがあるのかも…?」

 そう言えば、かつての雫(しずく)と文(ふみ)、五月と凪姫、そして茉莉とノンも、力の現れ方が少しずつ違っていた。もしかしたら、"CrescentMoon"の力も沙緒には自分と違った形で発現するのかもしれない。そう考えた錦子は、沙緒に"CrescentMoon"を託す。

「沙緒。あなたになら、ノンを見つけられるかもしれないわ。」
「わ…わたしが…?」
「えぇ。"月の欠片"から流れ込む力に、自分の心を同調させるの。そうすれば、あとは力が形となって発現するわ。」
「はい…!やって…みます!」

 ノンの為に何かが出来るなら…。その"想い"が、徐々に"月の欠片"に作用し始める。沙緒の手の中で"CrescentMoon"が少しずつ輝き始め、それに同調するかのように沙緒の脳裏にノンの姿が浮かび上がってゆく。

8.追いつめられるノン

 ノンは、深い森の木々の間に身を潜めていた。薄暗く生い茂った木が、皮肉にもアリスからその姿を隠している。周囲を窺いながら、ノンは冷静に分析を始める。

「この世界、まるで現実味が感じられない…。そう…夢の世界のような…。」

 そうか。おそらくは、誰かの強い"想い"が生み出した幻の世界、仮想空間なんだわ。だとしたら、あのアリスはこの世界の主、この世界を作り出した張本人---。

「でも、それにしては妙だわ。さっきの無機質な感じ、アリスには人間らしさが感じられなかった…。闇に喰われた人間のそれとは違う、感情の見えない冷たさ。いや、むしろひとつの目的を成すために作られた機械のような---。」

 その時、ノンの背後から声が聞こえる。

「ふふふ…、こんな所にいたのね。逃げられると思ったんだ?」

 咄嗟に振り向いたノンの目に飛び込んできたのは、冷たい笑みを浮かべながら宙に浮くアリスの姿。もしこの世界がアリス自身が生み出したものであるなら、宙に浮いているのも不思議ではない。むしろ、ノンの居場所など手に取るように分かるはずなのだ。これは、追われることによる恐怖心を植えつけるための演出。アリスは、その恐怖心を利用している…!
 そして、アリスが静かに右手を上げる。それを合図に、ノンの周りの木々は不思議の国のキャラクターたちに変わり、ノンに襲い掛かる。咄嗟に身を翻し、"無限の装飾-Infinity Dress-"を放つノン。しかし、目の前に迫ったキャラクターが霧散したのもつかの間、間伐を入れずにすぐさま次のキャラクターたちが襲い掛かる。そして、キャラクターたちがノンに接触するたび、ノンの年齢が逆行し始める。逃げ場のないノンは、次第に追い詰められてゆく。

「冷静に考えるのよ、ノン。このままじゃ、あの子供たちと同じに…!」

 その時、ノンは自分に接触したキャラクターたちが、先ほどと同様、黒い粒子となってまとわりついていることに気づく。エネルギーの粒子となったそれが、年齢逆行の源となっているのか…!

「そうか…。この空間が誰かの強い"想い"の力で生み出されたものなら、ここはエネルギーの集まりで構成されているはず。なら、空間自体に"無限の装飾-Infinity Dress-"を放てば、あるいは…!」

 ノンは、自分の足元に向かって"無限の装飾-Infinity Dress-"を放つ。ノンの予想通り、足元の大地を構成していたエネルギーが霧散し、小さな抜け穴が出現する。ノンは即座に、その穴に向かって滑り込むように飛び込んだ。

「往生際の悪いお客様ね。優衣ちゃんの大切な場所でこんなに暴れて…。ちょっとお仕置きしないとね。」

 アリスが冷たく笑うと、周囲に果てのない暗黒の空間が広がり始める。その空間は、穴に飛び込んだノンを追いかけるように、急速に拡大してゆくのだった。

9.対峙する凛華

 その一部始終を垣間見た沙緒は、錦子に詳細を伝える。それを聞いた錦子は、テレパシーで粉雪に呼びかける。

「さっきからノンにテレパシーで呼びかけてるんだけど、応答がないのよ。」
「こちらも同じ。何だか、妙なノイズで邪魔されてるみたいな…。」

 その会話を聞き、凪姫が口を挟む。

「ノイズ…!?そういえば、あの時も…!」

 凪姫は、文と二人で"闇"に憑かれた女性教師と対峙した際、校舎全体がノイズに包まれたようになっていたことを思い出したのだ。あの時の"闇結晶"も、確か"水の闇結晶"だったはず…!

「もし、沙緒が見たアリスが"水の闇結晶"だとしたら、テレパシーが通じないのも頷けるわね。」
「なら、何とかしてその空間に入る方法を考えないと。」
「空間に干渉するなら文の助けが必要だわ。今、そっちへ向かってるはずだから、合流して手を考えて。」
「そんな悠長なことをやってる場合かよ!先手必勝、こっちから仕掛けるぞ!」

 会話の一部始終をテレパシーでキャッチしていた凛華が、錦子の指示を阻むかのように会話に割り込む。

「ちょっと凛華…!何する気なの!?」
「そういえば、凛華は単独行動してたんだっけ…!」

 状況がわからず慌てる錦子と粉雪をよそに、凛華は行動を開始する。彼女は、先ほどの視線の主と思われる人物を見つけ出し、距離をおいて追跡していたのだった。

「凛華!一人で仕掛けるのは危険…!」

 しかし、そんな錦子の声には耳も貸さず、身軽に宙を舞ったかと思うと、一気に距離を詰めてその人物の目の前に立ちふさがった。突然現れた凛華に驚き、その人物は後ずさりする。

「だ…誰なんですか…!?」
「誰かは分かってるんじゃねーのか?」

 それは、一見高校生くらいに見える女性。身長はさほど高くなく、上から見下ろす凛華の威圧に、細身の体をこわばらせている。何かを持っているのか、その手は強く握り締められていた。
 一方、単独行動の凛華の身を案じた錦子は、沙緒を連れて現場へ向かう。

10.闇に堕ちるノン

 その頃、ノンはダンジョンを彷徨っていた。先ほどアリスが広げた暗黒の空間は、逃げたノンをも飲み込み、無限のダンジョンを形成していた。鏡で囲まれたダンジョン、そこに映る幾重にも重なる自分の姿…。その姿のひとつひとつが、ノンの過去のビジョンを映し出してゆく。

「これは…私の過去……。」

 そのうちのひとつが、静寂に包まれた部屋を映し出す。そして、カギを開ける音が響くと共にドアが開き、小さな人影が部屋に入ってくる。それは、幼い頃のノンであった。共働きの両親、誰も居ない部屋…。彼女の話し相手はいつも、愛用の人形だった。
 また、別の鏡に別のビジョンが映し出される。本棚に並べられたたくさんの本、それに囲まれた部屋の中心に座る子供時代の彼女。その中の数冊が、ノンの愛読書だった。そして、画用紙にその本の世界を想像して絵を描いていたあの頃…。いつしかそれが、彼女の時間の過ごし方になっていた。
 本を読むこと、絵を描くことが、一番自分らしくいられる。そんな彼女が学校で友達と交わす言葉は、日常の挨拶程度。気がつけば、教室の隅で静かに読書をしている。人と交わることを避けるようになった彼女が最後にいついた場所は、学校の図書室だった。ほとんど人が来ない図書室で、自分のお気に入りの本を何度も何度も繰り返し読みふける---。

「わたし…わたしはいつも、一人ぼっちだった…。」

 その瞬間、それを待っていたかのようにアリスの声が響く。

「そう。あなたは一人、ひとりぼっち…。でもここにいれば、あなたはあなたの望む世界で、あなたが望む通りに居られるのよ。」

 まるでその声に導かれるように、ノンの周囲が暗黒の霧に包まれ、彼女はその闇にのまれて行く。

11.視線の女性

 現実の世界では、凛華と"視線の女性"が対峙していた。両者とも一歩も動かず、睨み合いが続く。しばしの静寂のあと、凛華が口火を切る。

「お前から、"GibbousMoon"の気配がプンプンするぜ。説明してもらおうか?」

 凛華が一歩足を踏み出すと、"視線の女性"は身構えて一歩後ずさりする。凛華はさらに、女性に迫る。

「ノンをどこへやった!!」

 その声に驚き、"視線の女性"は突然逃げ出す。予想しなかった行動に面食らいながらも、凛華はすかさず大地を蹴り、女性の前に着地して立ちふさがる。その身のこなしに逃げることを観念したのか、彼女はその場に頭を抱えてしゃがみこんだ。

「ご…ごめんなさいぃ!これはお返しします!」

 そう言って彼女は、凛華に向かって右手を差し出す。その手には、アクセサリらしきものが握られていた。彼女を"闇結晶"に憑かれた者だと思い込んでいた凛華は、拍子抜けする。

「な…なんだ…?」
「これ…、あなたが探してるのはこれなんでしょ。悪気は無かったんです。でも、何か呼ばれたような気がして、つい手にとってしまったんです!」
「なんだ、それ…。"GibbousMoon"じゃないのか。どういう事だ?」

 状況が飲み込めず困惑しているところへ、錦子と沙緒が駆けつける。凛華が危ない橋を渡っていると思い込んでいた錦子も、拍子抜けた感じで話し掛ける。

「どうなんてんの?」
「それは俺様の方が聞きたいくらいだ。何が何だか…。」

 その時、女性が握るアクセサリを目にした沙緒が、口を開く。

「ノンさんが…ノンさんが近くにいます!」
「なんだって!?」

 その会話を聞いていた女性が、恐る恐る会話に割り込む。

「あの…、もしかしてその"ノン"って言う人、こう…長めの髪をツインテールに結んだ…。」
「なに!やっぱり知ってやがったのか…!」
「ひ…、ごめんなさい!!」

 女性のその様子を見て悪意がないことを悟った錦子が、彼女と凛華の間に割って入る。

「あなた…、その女の子がどこに居るのか知ってるの?」
「いえ、知ってるって言うか…、私の目の前で急に姿を消したんです。そしてら、このアクセサリだけが残ってて、それで…。」
「あなたが見た様子、もう少し詳しく話してもらえないかな?」
「は…はい…。」

 "視線の女性"が、ここに来た経緯を話し始める。
 その話によると、彼女は人より強い霊感を持っているのだという。たまたまこの付近を通りかかったとき、強い霊力に引かれてこの場所へ来たらしい。その時、霊に同調するかのような波動を発するノンを見つけ、後をつけた。そして、距離をとりながら観察していた所、急に目の前で姿を消したと言うのだ。

「私、普段は霊のすぐ近くを通ったときに、微かに声が聞こえる程度なんです。でも、このアクセサリを持った瞬間から、ずっと誰かが呼んでる声が聞こえてるんです。だから私…なんとかしてあげたくて…。」

 彼女はその霊感で、今まで何件かの行方不明事件解決のきっかけを作ってきたのだと言う。でも自分が出来るのは、偶然近くを通ったときに微かなその声の所在を見つけることだけ。ところが、このアクセサリを手にして以降、霊の声がはっきり聞こえるようになり、この周辺を探索していたらしい。

「とりあえず、あなたがアクセサリを拾った所に案内してくれないかな。」

 "視線の女性"は静かに頷き、三人を案内してノンが姿を消した場所へ向かう。

「沙緒、まだノンの気配は感じる?」
「はい。あのアクセサリを通じて、ノンさんが近くに居るのが…。」
「そうか…。多分、あのアクセサリが何らかの形でノンに繋がっているんだわ。もしかしたら、ノンが姿を消す直前に目印として残したものなのかもしれない。」

 しばらくして、"視線の女性"と錦子達三人は、ノンが姿を消した場所にたどり着く。そして時を同じくして、テレパシーで連絡を受けた文、凪姫、粉雪も合流する。

「ここです。あの水溜りの近くで、急に姿が見えなくなったんです。」

 誰?という顔で"視線の女性"を見る粉雪たちに、錦子はこれまでの経緯を説明する。その最中、凪姫が女性の持つアクセサリに気づき、おもむろに駆け寄って手に取る。

「これ…私がノンちゃんにプレゼントしたアクセサリだわ。ほら、ここに"to None"って彫ってあるもの…!」
「やっぱり…!」

 その瞬間、沙緒の脳裏にさらに鮮明なビジョンが浮かび上がる。ノンがアリスの世界に引き込まれる間際、凪姫に助けを求めて残したアクセサリ。凪姫がそれに触れたことにより、アリスの世界とこの世界により強い繋がりが生まれたのだ。

「ノンさん、ダメ!闇に飲まれないで…!」

 ビジョンを通じてノンの危機を知った沙緒が叫ぶ。アリスの闇に飲まれ、自分を見失い掛けているノン。このまま闇に堕ちれば、こちらの世界に戻れなくなってしまう…!

「ノンちゃん!」

 沙緒の叫びを聞き、アクセサリを強く握り締める凪姫。その想いが、ノンと凪姫の間に光の絆を築く。その光は、先ほどの水溜りに向かってまっすぐと伸びていった。

「文!そこの水溜りよっ!」
「よし…、ムーンライト・ダークネスっ!!」

 文の懇親の一撃が、水溜りを切り裂く。

12.導く光

 一人ぼっちの学生生活。授業とバイト、それ以外は絵を描いていただけの毎日。相変わらず、日常会話を交わす程度の友達以外、話す相手もいない。いや。以前にも増して、自分の世界に閉じこもるようになっていた自分。好きな漫画の世界を一緒に語り合える友達がいれば…。そんなことを考えたりもしたけど、一歩踏み出す勇気がなくて、オタクだと思われたくなくて、ホントの自分をずっと隠し続けてた…。

「あれ?それ、あなたが描いたの?可愛いっ!」

 ノートの隅っこに描いた落書き。授業でたまたま隣に座った彼女が、その小さな落書きに気づいて声をかけてきたのだ。咄嗟に隠す私に、無邪気な態度でさらに話しかける。

「えーなんで隠しちゃうの…。すごく上手いじゃない。」

 その人懐っこい笑顔に引きずられるように、私は今まで誰にも話したことのなかった話題をいつの間にか話していた。まるで、ずっと以前からの友達のように…。

「そうだ…。私は、彼女と出会えたおかげで、変われたんだ---。」

 その時、ノンに向かって一条の光が差し込む。その光は次第に輝きを増し、その中にノンが求める真実の光が浮かび上がる。そう、凪姫という光が---。

「凪姫---!」

 ノンが伸ばした手と光が触れ合った瞬間、ノンの周囲の闇が裂け、光に包まれる。その光は仮想空間を引き裂き、水溜りへの道を開く。水溜りから立ち上る水柱。それに押し出されるように、ノンの身体が飛び出してくる。それを見た凪姫が、誰よりも速く駆け寄った。

「ノンちゃんっ!」
「凪姫…。まだ…囚われてる人たちが…他にもいるの…。」

 水溜りを振り向いた凪姫の目に、水柱の中から現れたアリスの姿が飛び込む。そして、怒りに満ちた表情で、アリスが叫ぶ。

「優衣ちゃんの世界を壊す悪い人たち、みんな消えてしまえ!」
「てめーが、黒幕か!エンジェル・ハイロゥっ!!」

 アリスの攻撃より一瞬早く、凛華が"天使の光輪-Angel Halo-"を放つ。しかし、それに捕らえたかに見えたアリスは、一瞬の内に凛華の背後に回りこむ。

「ちっ!どうなってやがるんだ!?」

 困惑する凛華に向かって、沙緒が叫ぶ。彼女は、"CrescentMoon"の持つ力"真紅の旋風-Crimson Gale-"を介して、アリスの真の姿を見抜いたのだ。

「そのアリス…、アリスの中に仮想空間が見えます!アリスは…人形---!」
「そうか、なら…!ムーンライト・ダークネスっ!」

 文が再び、水溜りめがけて"月光の陰影-Moonlight Darkness-"を放つ。水溜りを突き抜けたそれは、その向こうに広がるアリスの内空間へと達し、仮想空間ごと内側からアリス人形を切り裂く。真っ二つに引き裂かれたアリス人形は粒子となって消え、崩壊した仮想空間から囚われていた人たちが次々と吐き出される。吐き出された人達からは、黒い霧が煙のように立ち上っては消え、それぞれが元の姿に戻っていった。

「人形だったのか。だったら、"闇"の本体は何処に…?」

 周囲を警戒する皆をよそに、"視線の女性"が口を開く。

「泣いてる…!」

 そう呟くと、女性は目標を定めたかのように突然走り出す。それを見た粉雪が、凛華と目配せをして共に後を追う。

13.哀しき真実

 "視線の女性"は小さなアパートの前で足を止め、2階を見上げて確信したように駆け上がってゆく。凛華と粉雪は、周囲を警戒しながら女性の後を追う。2階の一番奥の部屋に向かって、まっすぐに駆けてゆく女性。ドアノブに手をかけ、ひと呼吸おいた後、静かにドアを開ける。

「ママ…、ママはどこ…?」

 締め切ったカーテンの薄暗い部屋、決して広いとはいえない室内の中央に、まだ幼い少女が一人泣きながら立っていた。その手には、先ほどのアリス人形が握られている。

「こいつが"闇結晶"に…!」
「待って、凛華!」

 身構える凛華を、粉雪が制止する。二人のやり取りをよそに、"視線の女性"はその少女にゆっくりと近づいてゆく。

「どうしたの?何で泣いてるの?」
「お姉ちゃん、ママがいないの…。何処へ行ったの…?」
「あなた…私の声が届くのね。ママはいついなくなったの?」
「ずーっと前…、ずーっと前から私一人ぼっちなの。」
「そうなの…。寂しかったよね。」
「うん。お友達のアリスちゃんしかいなくて寂しかったの。でも、アリスちゃんもお話してくれなくなっちゃった…。」
「そう…。ママに会いたいよね。」
「うん、会いたい。ママはどこ…?」
「じゃあ、ママの姿を思い浮かべて。そうしたらきっと、ママに会えるよ。」

 その少女からは敵意は感じられない。会話の内容がいまひとつ理解できない凛華と粉雪だったが、成り行きを静かに見守っていた。"視線の女性"の言葉に促されて、少女は静かに眼を閉じる。そして女性がゆっくり手をかざすと、その手の先に徐々に人影が現れてゆく。その人影がはっきりとした形を成し始めた瞬間、凛華が粉雪に向かって声を挙げた。

「おい!あの女は…!」

 二人は、その人影に見覚えがあった。あの日、錦子たちがmoemiのコンサート会場で"闇"と対峙していた同じ日に、自分たちの力が及ばず救えなかった"水の闇結晶"に憑かれた女性であった。

「目を開けてごらん。」

 "視線の女性"の言葉に従い、少女は静かに目を開ける。その人影が目に入ったのか、それまで沈んだ表情だったのが、一気に明るい表情へと変わる。

「あ…、ママだ!ママっ!」

 少女は無邪気にその人影に駆け寄り、思いっきり抱きついた。そして、ひとつになった少女と人影の周りに光の粒子が浮かび始め、泡の様に天に上ってゆく。それを見送るように、"視線の女性"は優しい眼差しで天井を見上げる。まるでイルミネーションのような輝きがしばらく続き、やがて静寂が訪れた。

「今のは一体…?」

 そう問いかける凛華に対し、"視線の女性"はゆっくりとふすまの向こうを指差す。凛華は静かにふすまに近づき、勢いよくそれを開いた。

「きゃっ…!」

 ふすまの向こうを見たとたん、思わず目をそむける粉雪。そこにある小さなどす黒い塊は、思わず逃げ出したくなるほどの異臭を放っていた。そして、かろうじて確認できる四肢が、それがかつて人であったことを物語っている。右手と思われる部分に握られた、真っ二つに裂けたアリス人形…。そう。それは紛れもなく、先ほどの少女の亡骸だった。その有様を見た凛華はすべてを悟る。

「これが…これが俺たちの限界かよ…!!」

 凛華たちが救えなかった女性には、子供がいたのだ。おそらくその子は、母親が命を落としたことを知らず、ただ一人、ずっとこの部屋で待ち続けていたのだ。やがて食べるものもなくなり、それを得る術がなかった少女は、衰弱して死を迎える。それを物語るかのように、部屋の中には菓子の包み紙やジュースのペットボトルが散乱していた。
 やり場のない感情に、拳を握り締める凛華。その拳に手を添え、粉雪が声をかける。

「ここからは、私たちの仕事じゃないわ。行きましょう…。」

 凛華の背を押しながら玄関へ向かう粉雪。二人が"視線の女性"の前を通り過ぎようとしたとき、彼女が声をかける。

「これ、お返しします。」

 彼女は、ずっと握り締めていたノンのアクセサリを粉雪に差し出す。粉雪は黙ってそれを受け取り、凛華と共に部屋を出て行こうとする。そんな二人を見ながら、"視線の女性"が口を開く。

「私…、いつもはすぐ近くの霊の声が、一方的に聞こえるだけなんです。だから、いつも何も出来ずに悔しい思いをしていた…。でも、今日はあの子の呼ぶ声が遠くから聞こえて、会話を交わすことも出来た…。きっと、このアクセサリに込められた力のおかげだと思います。」

 その言葉に凛華は立ち止まり、押し殺す様な声で返す。

「だが、俺たちがあの子の母親を救えなかったのは事実だ。救えていたら、あの子も命を落とすことはなかった…!」
「でも…それでも、あの子の魂は救われました。この力がなかったら、あの子の魂はずっとあそこで彷徨い続けてた…。あの子、最後に言ってくれたんです。"お姉ちゃん、ありがとう"って---。」
「魂だけ救えたって意味ねぇだろ…。」
「凛華…!」

 粉雪は女性の方を向き、ごめんなさいね、という風に囁く。そして、凛華の背を押しながら足早に立ち去ろうとする粉雪に、"視線の女性"が思いつめたような声で想いを投げかける。

「あの…。その力が何なのか、あなたたちが何者なのかはわからないけど、今まで私が出来なかったことを成せる力がある…。それに巡り合ったのは、偶然じゃないと思うんです。何か…、私にも何かできることはありませんか!?」
「中途半端な気持ちで関わらねぇ方がいい。でなけでば、次にああなるのはお前だ。」
「もう!」

 凛華を小突き、粉雪が女性のほうを向き直って応える。

「もしあなたが、誰かのために何かをしたいって気持ちがあるなら、アキバにある"SilentMoon"って言うメイド喫茶を尋ねてきて。」
「おい…、粉雪!」

 何を言い出すんだ、という表情で睨む凛華に、粉雪は真剣な表情で返す。

「彼女の目…本気よ。多分、今まで私たち以上に沢山の死に直面してきたんじゃないかしら。私たちが"使い手"になったのも、同じような動機だったじゃない。少なくとも彼女は、"GibbousMoon"の力に反応した。それだけでも"本物"だと思うわよ。」

 ちっ、勝手にしろ、という風に、凛華は不機嫌な態度で部屋を出てゆく。その後を、なだめるような言葉をかけながら追いかける粉雪。そんな二人を、"視線の女性"は深く一礼しながら見送るのだった。

14.エピローグ

 翌日の夜、開店後のSilentMoonではミーティングが行われていた。

「後味の悪い事件だったな…。」

 凛華は、自分の力不足で起こってしまった事件だと、自分を責めていた。皆が、どうしようもなかった事となだめても、納得できない様子だ。
 後で判ったことだが、"水の闇結晶"に憑かれた女性は天涯孤独の身の上だったらしい。そして、生まれ持った優しい性格のために逆に人に騙され、利用される人生を送ってきた。そんな彼女に小さな幸せが訪れる。ある男性と出会い、その人との間に授かった新しい命。それが、彼女がやっとの思いで手に入れた楽園だった。
 しかし、それも長くは続かなかった。深夜、家路を急ぐ男性に悲劇が降りかかる。制限速度の2倍以上で走行していた暴走車。それが、彼女の愛するものを奪ってしまう。しかも、そのドライバーは泥酔状態であったのにも関わらず、その裁きは驚くほど軽いものだったのだ。そう、まだ若いその男は、地元の有力者の息子だった。
 そして、悲しみに暮れる彼女に悪魔が囁く。凛華と粉雪が彼女に辿り着いたとき、彼女はすでに何人もの命を手にかけた後だった。

「やりきれないわね…。」
「でも、彼女を追い詰めた人たちこそ、"闇"そのものじゃない…!」
「そうね。そういう人たちの心こそが"闇"を生み出し、力を与えるのかもしれないわね。」

 店内に、沈黙と重苦しい空気が漂う。そんな空気を換えるべく、錦子がある疑問を投げかける。

「でも、今回の事件、結局"闇結晶"は一度も現われなかった…。どういう事なのかしら…?」

 それに対し、唯一、アリスが生み出した世界をその身で体験したノンが答える。

「多分…人の"想い"が"闇"の力に反応したんじゃないかと思うんです。詳しく調べてみないと、確かなことは言えないですが…。」
「"想い"…?」

 あの少女の母親が"闇"に喰われて絶命する直前、残った僅かな母親としての心の欠片が子供の行く末を案じ、その"想い"と"闇"の力が反応して、少女がずっと大切にしていたアリス人形に憑依した。そして、アリス人形に自我が生まれたのではないだろうか?

「昔から、大切にしている人形には魂が宿る、て言うじゃないですか。普段から、母親が留守の間の遊び相手があのアリス人形だったのだとしたら、人形に魂が宿っていたのかもしれません。あの人形は、あの子がずっと一人で寂しがっているのを身近で知っていた唯一の存在---。」

 その人形が自我を持ち、あの少女の"一人は寂しい"という"想い"に応えた。そして、周りで同じ想いを抱いていた人たちのそれを礎に、あの偽りの"楽園"を組み上げたのではないだろうか。

「誰かが意図したわけではなく、母が子を思う一つの"想い"をきっかけに紡がれていった"想い"の集合体…。それが、今回の事件の真相じゃないかと思うんです。」
「でもそれも、あの少女の命を繋ぐ術には成りえなかった。誤った方向へ使われた力か…。」

 そう言った粉雪の脳裏には、あの母親が絶命する刹那、何かにすがる様に天に向かって手を伸ばしていた姿がよみがえる。

「でもな、ノン。理屈は分かるが、どこかで誰かがあの人形を操っていたという線も捨て切れないぜ。」
「いえ、それはないと思います…。あの世界にとらわれて、あの世界が持つ空気を直接感じたから分かるんです。」
「"想い"で紡がれた力…。純粋ゆえに起こってしまった事件…か。でもそれって---」

 錦子が疑問を口にしようとした瞬間、ドアが開いて茉莉が入ってくる。

「みんな集まってるわね。丁度良かったわ。」

 茉莉は背後を振り向き、入って、と誰かを招き入れる。茉莉の背後から現れた小柄な人物を見るなり、凛華が声を上げる。

「お…お前…!」

 凛華とは対照的に、粉雪はその人物に優しい笑みで応える。

「いらっしゃい。来ると思ってたわ。」

 凛華と粉雪以外の皆も、お互い顔を見合わせて口々に小声で話している。そう。それは、昨日の事件で居合わせた"視線の女性"だった。

「朱月(あるな)です。よろしくお願いします!」
「ちょっと茉莉さん!そんなに簡単に---。」

 不満そうな凛華に対し、茉莉が諭すように説明する。

「もちろん、あなたたちと同じようにちゃんと意思確認はしたわよ。知ってると思うけど、彼女は"GibbousMoon"に適応する人物よ。五月の想いを大事に思ってくれる凛華の考えは嬉しいけど、実際人手は足りてないしね。昨日、みんなが出て行った後、大変だったんだから。」
「ま…まぁ、茉莉さんが決めたんなら、しょーがねぇな…。」

 凛華は不満げな口調で、朱月の方を見ながら檄を飛ばす。

「覚悟を決めてきたんだろうから、全力で鍛えるぞ!ビシバシいくから覚悟しとけ!」
「凛華…、せっかく来てくれた新人をビビらせてどうするのよ!」

 また言ってる…という表情で、錦子が愚痴をこぼす。そのやり取りに、沈んでいた室内が少し明るさを取り戻す。そして、朱月と挨拶を交わす皆を見ながら、ノンは先ほど錦子が言いかけた言葉を思い出していた。

「錦子さんがさっき言いかけた言葉…。もしかしたら、私と同じことを考えていたのかもしれない。」

 あのアリス人形が、本当に母親の"想い"をきっかけに自我を持ち、あの空間を作っていたのだとしたら、それは何かの力を他の力に変化させる"無限の装飾-Infinity Dress-"そのもの…。それが、"闇"の力によって起こされたのだとしたら、"闇"の力と"月の欠片"の力は---。

「ううん、そんなはずないわよね。考えすぎ、考えすぎ…。」

 自分の考えを否定するように、ノンは小さく首を振る。そんなノンの背後から、ふいに凪姫が腕に抱きついた。

「な…なによ、凪姫!びっくりするじゃない。」
「ノンちゃん。さっきの話だと、"一人が寂しい"って思ってる人たちが取り込まれた、てことよね。何でノンちゃんが取り込まれたの?もしかして、いつも寂しいって思ってる?それに、私も取り込まれそうになったんだけど、何でかな?」

 図星を突いた凪姫の質問に、ノンは少し動揺しながら答える。

「え…。それはその…ほら、"月の欠片"の力と"闇"の力が引き合ったんじゃないかな?これからは、お互いもっと気をつけないとねぇー。」
「ホントにぃ?凛華さんも粉雪さんも一緒にいたのに、何で私たちが…。おかげで、また凛華さんに怒られたんだから…。」

 以前は一人で過ごすことが多かったノンが、メイド喫茶で働くほど社交的になったのは、まぎれもなく凪姫との出会いがきっかけっだったのだ。そして自分が危機に陥ったとき、無意識に助けを求めたのも凪姫…。そんな"想い"がアリスの世界に引き込まれる引き金になったことは、ノンには明白だった。

「あぁ。私たちドジっ娘だからね。多分、"闇"もそういう"使い手"を狙ったんじゃない?」

 適当な言葉でごまかしながら、凪姫から離れるノン。その顔は、ほんの少し紅潮している。

「そんなこと、面と向かって言えるわけないじゃない…。」

 心の中でそうつぶやきながら、ノンは仲間のいる今の幸せを改めて噛み締めるのだった。

第六夜・完

 今回は前後編に分けず、一気に一話分公開してみました。いかがでしたでしょうか。公開に時間はかかってしまいますが、一気に読める方がいいでしょうか?内容は、元々サイドストーリーだったエピソードにスポットを当てて、本来別のシナリオ用に用意していたノンのエピソードを組み込んでみました。一部の方たちにネタふりしていた通り、後味の悪い話に仕上がってるかと…。スイマセン…汗。
今回より、キャラがまた二人増えてます。尊敬するある方に、キャラ多すぎ、と指摘されたのですが、色んな大人の事情でたくさん出さなきゃいけないんです!(苦笑)そして例のごとく、モデルにさせていただいた方々がいらっしゃいます。その内のお一人は間もなく新しい門出を迎えられるんですが、自分の拙い作品が僅かでも餞になればなぁと思っております。あなたが一番輝ける舞台で、力の限り頑張ってください。遠い空の下から応援してます!
 さて、次回からの7~9話は三部作です。しかも今回、いくつかのネタふりもしてます。いくつのネタふりに気づくかで、三部作の楽しみ方も変わるかと…笑。7話のシナプスはほぼ出来上がってるので、割と早めに公開できるかもしれません。(毎回同じことを言ってるとか言うツッコミはナシで…苦笑。)あまり期待せず、気長にお待ちくださいませ!
 そして…近日、重大発表があるかも???

※この物語はフィクションです。実際の社会・団体・人物等とは一切関係ありません。
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投稿者 戸神由留 : 00:00 | コメント (0)

■2008年04月01日

▼Silent Moon - Silent Moon-六つの月- 第6話予告

■第6話予告■
 人は誰しも、自分が一番幸せでいられる場所を探している---。
 救えなかった生命が引き起こしたもうひとつの悲劇。そして、その声を聞く謎の女性。偽りの楽園で、ノンは自らの過去に心を乱す。
 新しい風が彷徨う彼女を導く時、真実の光はその闇を切り裂くのか。
 次回、SilentMoon~六つの月~ 第六夜「楽園の果て」。友と言う名の楽園を探して---。

*

間もなく公開予定です!
(ただ今、最後の微調整中。エイプリル・フールじゃないよ!汗)

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